PGSとは「参加型保証システム」の略称で、生産者と様々な立場の関係者が協力して、互いに理解と信頼を築いていく取り組みです。
信頼できる有機農産物を提供したい、という動機は有機JASなどの第三者認証と同じですが、栽培基準やその遵守を確認する方法を「PGSメンバー自身が」定め、実行する点が大きな違いです。
そのような取り組みは、昔から世界各地で様々に行われてきました。たとえば、霜里農場で故・金子美登さんが始め、今も続く「提携」もその一つと言えます。
2008年にIFOAM(国際有機農業運動連盟)が、それら多種多様な取り組みの本質や共通点をガイドラインにまとめ、Paticipatory Guarantee System、PGSという名前を与えました。
参考: IFOAM (英語)
1993年に10名ほどで発足した小川町有機農業生産グループに、現在は小川町と近隣自治体(ときがわ、嵐山、東松山など)で有機農業を行う70名ほどが所属しています。
地域で有機農業が広がる反面、以前のような、会員同士で役立つ情報を教えあったり、有機農業への思いを語り合ったりする機会が自然発生する状態ではなくなってしまいました。
それは栽培技術向上にとって望ましくありませんし、万一誰かが(意図的かは問わず)有機農業として不適切なやり方をしていても、気付けない、注意できない懸念があります。ひいては「小川町の有機農業」に寄せていただいている期待や信頼を裏切る事態につながってしまうかもしれません。
その危機感をもって開催した2022年有機農業フォーラム「有機農業の証明」において、有機JASのような第三者認証とは別の認証の仕方として「参加型保証システム」が紹介され、小川町に適しているのでは?という感触を得ました。
2023年度にはPGS先行事例として岩手県雫石町のオーガニック雫石様を視察し、理解を深めました。
今年度はPGSの中心的活動である農場調査を、仮の形で実施してみて具体的な課題を把握することにしました。以下に当日の様子や使った資料、実施した結果の感想や課題などを公開します。
以下、当日の様子を紹介します。
八和田公民館にて
PGSの説明や、自己紹介などを行いました。
生産グループ会長の金子宗郎さん挨拶
「認証ということについて、我々生産者の思いは「我々が販売するのは、有機の野菜、有機のお米、有機の大豆です」と、伝えたいだけなんです。
ただ、小川町の小さな有機農家にとって今の有機JASの認証制度に則るのは難しいところがあって、小川町では取ってないっていう状況です。一方、社会の流れから言うと、インボイスだとか、今では当たり前のようにトレーサビリティや透明性、説明責任など求められるようになっています。
有機JASの制度ができたとき、河村さんがおっしゃっていた「本来そういうことを証明すべきなのは、農薬や化学肥料を使っている方ではないのか」というのは本質をついていると思います。我々は農薬も化料も使ってないので、そういう書類を求められても記載するところはほぼないんですよ、化学肥料ゼロ・農薬ゼロなので。
むしろ有機農家が思いを込めてやってるところが有機JASでは評価されないですよね。例えば、生ごみをバイオガス化して液肥を作って、それでいい苗作っていい野菜作るとか。今日見せていただく田下さんの工夫とか。下里ゆうきでもすごく工夫した堆肥づくりをやっています。そういうところが今の有機JAS制度ではなかなかしっかり光を当てられない。
ですので、皆さんのお力を借りながら、そういう点を社会に伝えられるような、また小川の行政制度のおがわん制度とも矛盾しないような仕組みを、5年、10年かけてね、やっていければいいかなという風に私は思っています。
今日はその第一歩ということで、忌憚のない意見をよろしくお願いいたします。
風の丘ファームは圃場が40か所ほどもあるので、今日はその1つ「五反の田んぼ」を見学しました。
春から秋は米、稲刈り後は葉物中心に10数種を時期をずらして作付けています。
寒さで甘くなったほうれん草。
アブラナ科は多くなった株から間引き収穫します。残った株からは春先に菜花を収穫できます。
水田なのに土が柔らかい!という感想が参加者からでていました。
田下さん「土の良し悪しとか、生物多様性とか、冬の田んぼではあまりわからないけれど、田植え前に水を入れるとカブトエビや色々の生き物がワーッと出てくる。それを見ると、生き物の多い土にできているのかな、と思う。」
米麦の乾燥機やトラクターなどの並ぶ建屋。奥側に野菜の洗い場があります。泥水がそのまま流れていかないよう、泥を枡に沈殿させる仕組みになっていますが、年数回の泥浚いは大変だそうです。
野菜を調整・包装する出荷場。
八和田公民館に戻って記録票を書きつつ、交流しつつ昼食。
今回は小川町のフレンチレストラン「atelico」さんと、深谷の「やまと華うどん」さんに、風の丘ファームの野菜と下里ゆうきの小麦粉を使ったお料理を用意していただきました。
下里地区で130枚ほどの田んぼの裏作(小麦・大豆)を引き受けています。
今は小麦の芽が育ってきたところ。
南(画像左手)に槻川があり、その水を引く用排水路が整備されています。小麦・大豆栽培では通常は水やりしませんが、あまりに暑かった夏にお願いして使わせてもらったことがあるそうです。
代表の河村さん
ちょうど堆肥散布中でした。
稲刈り後に堆肥散布・耕耘すると小麦の播種が遅れがちなので、発芽した小麦の上から堆肥を撒く方法に変えたそうです。麦踏みも同時にできる!
いつもはトラクター等が入っている機械倉庫に机を並べて質疑応答など。
左手に小麦貯蔵庫があるのですが、容量不足が悩みの種だそうです。
記録票の内容、見学会についてのアンケート、後日の振り返りなどの内容をこちらにまとめました。
今回の見学先生産者のプロフィールや、圃場・作付に関する情報を以下のリンク先で紹介しています。ぜひご覧ください。
このページに載せきれなかった写真もこちらからご覧いただけます。
これらに取り組みつつ、来年度も圃場見学会を実施したいと考えています。